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菊谷浩至 koji kikutani

@kojikikutani

詩に接触 
医書2冊 2019『臨床のなかの対話力 』協同医書出版社
2021『臨床ノートの余白に 』
詩と思想詩人集2022~2024
詩と思想2022年間最優秀作品 

Investor protestant

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直島銭湯 走る 跳ぶ それは わたしのもの 流暢に話す 声のないわたしの 走れないわたしの 代わりに あこがれ よろこび 銭湯に入って 今日の変身を 脱ぐ 常連の語らい わらい かなしみ ふれあい 裸の 卵に 生まれ変わって 翌朝 スクランブルエッグ になる それを 滋養にして 本をひらく

直島銭湯

走る
跳ぶ
それは
わたしのもの

流暢に話す
声のないわたしの
走れないわたしの
代わりに
あこがれ
よろこび

銭湯に入って
今日の変身を
脱ぐ
常連の語らい
わらい
かなしみ
ふれあい
裸の
卵に
生まれ変わって
翌朝
スクランブルエッグ
になる

それを
滋養にして
本をひらく
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骨臓器 骨臓器にミルクをいれてのむ 野蛮がこぼれないように 宇宙が降るさなかの 割れる足もとに 禁断の声を置く 跳ねて 大地を考えましょう あかるいつぶやきが近くから頭の蓋をあける 洗い 通りすぎ 脳に大地を敷く 土と砂でできた細胞がひろがっていく分裂のくりかえし

骨臓器

骨臓器にミルクをいれてのむ 野蛮がこぼれないように 宇宙が降るさなかの 割れる足もとに 禁断の声を置く 跳ねて

大地を考えましょう

あかるいつぶやきが近くから頭の蓋をあける 洗い 通りすぎ 脳に大地を敷く

土と砂でできた細胞がひろがっていく分裂のくりかえし
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時間はなくなる 1 ウィークエンド 時間は流れ なくなる なぜ黙っていたのか 2 そこにある 腕 家までの距離は さほど遠くない 海を渡る傷 3 春 缶詰まずい 開けみて どこで買ったのか 開けないで味がわかるのか 同居は早すぎたみたい 開けてからにすれば 面倒な有機物なのに

時間はなくなる

1 ウィークエンド

時間は流れ
なくなる
なぜ黙っていたのか

2 そこにある

腕
家までの距離は
さほど遠くない
海を渡る傷

3 春

缶詰まずい
開けみて
どこで買ったのか
開けないで味がわかるのか
同居は早すぎたみたい
開けてからにすれば
面倒な有機物なのに
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ブラックアウト              街のあちこちで 断線 流れていたものが消えてしまうと たちまち違う場所があらわれる おどろ棘しい予兆もなく 突然の災い 次第にそれは大規模だとわかる 混乱する顔々 不安の広がり やがて水もとまる 乾きは今にはじまったことではなし

ブラックアウト
            
街のあちこちで 断線 流れていたものが消えてしまうと たちまち違う場所があらわれる おどろ棘しい予兆もなく 突然の災い 次第にそれは大規模だとわかる 混乱する顔々 不安の広がり やがて水もとまる 乾きは今にはじまったことではなし
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さなぎ ああしているうちに、ひょうひょうと、いたい。どこまでもズレていて。そこにいるのが、弱い居場所。ゆがんで、外れて、倒れると、わからなくなりもして、ねじれて、呱々か、そこか、割れて、縮んで、まだ見えている。

さなぎ

ああしているうちに、ひょうひょうと、いたい。どこまでもズレていて。そこにいるのが、弱い居場所。ゆがんで、外れて、倒れると、わからなくなりもして、ねじれて、呱々か、そこか、割れて、縮んで、まだ見えている。
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ロバなのかラバなのかカバなのか ロバなのかラバなのかカバなのか迷う日々にカバが外れてロバとラバと過ごすうちにカバが懐かしくカバを呼ぶも行方がわからないどんな姿だったのかも

ロバなのかラバなのかカバなのか

ロバなのかラバなのかカバなのか迷う日々にカバが外れてロバとラバと過ごすうちにカバが懐かしくカバを呼ぶも行方がわからないどんな姿だったのかも
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ユートピアワームホール ワームホールへ傾いた家に住む建築家の 螺旋に走る車の運転手が 行きつ戻りつしながら端倪をくぐりぬけ 届かなかった郵便物の見えない整理に勤しむ配達人たちの拠り所に 二昼夜かけて かかるのか前言取り消し

ユートピアワームホール

ワームホールへ傾いた家に住む建築家の 螺旋に走る車の運転手が 行きつ戻りつしながら端倪をくぐりぬけ 届かなかった郵便物の見えない整理に勤しむ配達人たちの拠り所に 二昼夜かけて かかるのか前言取り消し
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素性 裾野の村に着いて古家に入り縁側に座って枯山水を眺めた  虹彩に砂のせせらぎ沁みた 黄葉の擦れる風音に村人の気配 土塀にかかる木々赤々と 縁側から庭に下りた 魚の背を越えてせせらぎを踏んだ 藻に絡まるくるぶしの外弧の螺旋に刻まれた階段をのぼった 二階の窓を開けて息を継いだ

素性

裾野の村に着いて古家に入り縁側に座って枯山水を眺めた 

虹彩に砂のせせらぎ沁みた 黄葉の擦れる風音に村人の気配 土塀にかかる木々赤々と 縁側から庭に下りた 魚の背を越えてせせらぎを踏んだ 藻に絡まるくるぶしの外弧の螺旋に刻まれた階段をのぼった

二階の窓を開けて息を継いだ
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岬を回る 目が覚めて 気配のない片隅に 合図を送る 突然消えてしまったから 別れを言わなければならない 朝の淡い光がカーテン越しに カーテンがゆれる 密室だが 合図が届いたのだろう 岬を回る 入り江に横たわる船の甲板には 見知らぬ水夫が 父だったかもしれない 遠い記憶を探る

岬を回る

目が覚めて 気配のない片隅に 合図を送る 突然消えてしまったから 別れを言わなければならない 朝の淡い光がカーテン越しに カーテンがゆれる 密室だが 合図が届いたのだろう 岬を回る 入り江に横たわる船の甲板には 見知らぬ水夫が 父だったかもしれない 遠い記憶を探る
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初対面の挨拶のそばにいるのは 脇道に入ると底が割れて 人が現れる 挨拶を交わしているうちに人は人ではなくなるとわたしは気づく あなたは気づかない どうしてわからないのか 挨拶の言葉が言葉ではなくなってもわからないのはどうしてなのか 言葉の残響が消えないからなのか

初対面の挨拶のそばにいるのは

脇道に入ると底が割れて 人が現れる 挨拶を交わしているうちに人は人ではなくなるとわたしは気づく あなたは気づかない どうしてわからないのか 挨拶の言葉が言葉ではなくなってもわからないのはどうしてなのか 言葉の残響が消えないからなのか
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シワをのばして  服のシワをアイロンでのばしていくと シワは見えなくなり 気分は晴れたけれども シワは痛みのなかに仕舞われた シワは胸の辺りにあった 縦に 横に 途切れて 斜めに ねじれて 曲がる それら全部のシワが消えたとき 独り言も一緒に消えそうになりながら

シワをのばして 

服のシワをアイロンでのばしていくと シワは見えなくなり 気分は晴れたけれども シワは痛みのなかに仕舞われた

シワは胸の辺りにあった 縦に 横に 途切れて 斜めに ねじれて 曲がる それら全部のシワが消えたとき 独り言も一緒に消えそうになりながら
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調査員の階段 調査員です 調査に来ました スパイではありません そんな危ない仕事はしていません ただの調査です 壁の強度を計測するパターンあるでしょ あれと同じような感じです それを人に当てはめてみて 調査するのです そんなに時間はかかりません

調査員の階段

調査員です 調査に来ました スパイではありません そんな危ない仕事はしていません ただの調査です 壁の強度を計測するパターンあるでしょ あれと同じような感じです それを人に当てはめてみて 調査するのです そんなに時間はかかりません
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象牙/深い霧には入らないこと 過去の予言を象る足跡の 内側に沿う緑の光 辿れば文字が浮かぶ 読めないどこかの国の挨拶 波の音に似ている 繰り返し寄せて 触れるたびにはじまる いかなるときも遂にはじまる 人は海からやって来ると ゆらぐ影として引き継がれる 荒い呼吸で水を吐き出し

象牙/深い霧には入らないこと

過去の予言を象る足跡の 内側に沿う緑の光 辿れば文字が浮かぶ 読めないどこかの国の挨拶 波の音に似ている 繰り返し寄せて 触れるたびにはじまる いかなるときも遂にはじまる

人は海からやって来ると ゆらぐ影として引き継がれる 荒い呼吸で水を吐き出し
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打刻機 朝焼け バスの打刻機で 場所と時刻を 乗車券に めり込む溝に 青白い生命線が 見える  指腹でこすると 消える  また浮かぶ  点滅する  鼓  動 次のバス停で 様々な制服の 百人ほど降りる 田園風景以外 なにも見えない 徒歩圏内に 工場や住宅 会社や学校 見えない  人々はちりぢり

打刻機

朝焼け
バスの打刻機で
場所と時刻を
乗車券に
めり込む溝に
青白い生命線が
見える 
指腹でこすると
消える 
また浮かぶ 
点滅する 
鼓 
動

次のバス停で
様々な制服の
百人ほど降りる
田園風景以外
なにも見えない
徒歩圏内に
工場や住宅
会社や学校
見えない 
人々はちりぢり
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ブルーノのその後 1 飼い主ブルーノ ブルーノはその後あれこれと悩む あれは犬なのかそれとも人なのか これは自然のなりゆきなのか何者かの操作なのか あれに関してはいくら考えても明言できない

ブルーノのその後

1 飼い主ブルーノ

ブルーノはその後あれこれと悩む
あれは犬なのかそれとも人なのか
これは自然のなりゆきなのか何者かの操作なのか
あれに関してはいくら考えても明言できない
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分析官ブルーノ/得体の知れないモノ 分析官ブルーノは犬を飼ったことがない 犬に限らず生き物を飼うという行為をうまく理解できない どうしてもそこには強者が見え隠れする どんなに控え目な飼い主も例外とはならない 飼うか飼われるか 二者択一しなければならないとしたら

分析官ブルーノ/得体の知れないモノ

分析官ブルーノは犬を飼ったことがない
犬に限らず生き物を飼うという行為をうまく理解できない
どうしてもそこには強者が見え隠れする
どんなに控え目な飼い主も例外とはならない

飼うか飼われるか
二者択一しなければならないとしたら
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ルビコン川を渡る 隣の部屋に入ると ピアノの鍵盤を傷つけないようにして 海ガメが泳いでいた 大波が寄せ 書棚から何冊かの本がさらわれた 本が抜けた隙間には 銃が置かれた 元の部屋に戻ると 冬になった 暖房が壊れていて 分厚い毛布にくるまる テレビでは 犯罪のニュースばかり

ルビコン川を渡る

隣の部屋に入ると ピアノの鍵盤を傷つけないようにして 海ガメが泳いでいた 大波が寄せ 書棚から何冊かの本がさらわれた 本が抜けた隙間には 銃が置かれた 元の部屋に戻ると 冬になった 暖房が壊れていて 分厚い毛布にくるまる テレビでは 犯罪のニュースばかり